髑髏城の七人 下弦の月 11/25(土)18:00 初日

11/25(土)18:00 初日 24列センターブロック

※ネタバレ満載の備忘録です

待ちに待った下弦の月初日公演。
思い出せる限りツラツラと。

 

オープニングから天魔王が天魔王になるエピソードが追加されていて、鎧を身に纏う前の「普通の人間」であった天魔王を観ることで、天魔王がとても深堀された印象。
拡樹くんは良い意味で薄い顔なので天魔王のメイクがめちゃくちゃ映える。鎧とマントを纏った姿は、マモ捨より約10センチ小さいとはとても思えなかった。自分にとって絶対的な「天」だった信長に成り替わろうとしているからか、芝居掛かった立ち居振る舞いに存在感が凄まじい。血に汚れきった手がとても印象的。どこまで顔の筋肉柔らかいんだろうと思うほどに表情が動く。狂気の悪役だけど、オープニングに追加されたシーンもあって、人間としての弱さや蘭兵衛に対する歪んだ憎しみがあり、鎧を剥がされて華奢で弱弱しい1人の人間に戻っていく有様はとても痛々しく、とても良かった。

私は根底が鈴木拡樹ファンなので、贔屓目も存分にあると思うが、歴代の名だたる天魔王と比べて遜色の無い正統派の天魔王だったと思う。 良い意味で遊びや脱線の無い天魔王だった。初日なので双眼鏡は控えめにして全景を見ていることが多かったので、次は天魔王の表情を追いかけたい。私は鳥髑髏を見たときは、天は蘭を陥れたいが故に夢見酒を飲ませて取り込んだんだと思ってたけど、下弦ではもっと別の感情もあるように感じた。天にとっての蘭をもう少しよく見て考えたい。生駒との関係性ももう少し着目したい。生駒の最期が壮絶すぎた。

私はこういう鈴木拡樹が見たかった。天魔王は観たけど、鈴木拡樹を観たという気がしない。これこそ鈴木拡樹だと思う。初日と千秋楽で同じ金額なのだから、初日から仕上げてくるのは当然だけど、それを前提においてもとても仕上がっていたと思う。おおむね好評のようで、本当に嬉しい。

宮野真守捨之介。個人的にマモはテニミュの石田鉄以来なので10年以上ぶり。さすがの台詞の聞きやすさ。マモ捨の台詞は一言一句きちんとスコーンと聞こえてくる。そして伝わってくる。舞台役者は「一声、二顔、三姿」と言われている理由を改めて実感させられるくらい。スピード感と勢いのある新感線芝居でこの聞きやすさと表現力はすごい。超ワカドクロ…の中でちょっと上髑髏、と茶化したマモ捨だけど、その「ちょっと上」のマモの根っこの明るさや優しさが滲み出たアニキ感が、沙霧から霧丸になったポジションとの兄弟分的な関係性に抜群に良く、男の子への変更がとってもハマってた。あと殺陣の進化には期待したい。殺陣は1人だけうまくても意味がない。段取りに慣れて全体でスピードや重さが底上げされて、もう少し強さが加わるのが楽しみ。ラストの捨天の立ち回りは、2人きりで魅せながら鎧も剥ぐという結構な難所だと思うけど、本当に見せ場だと思うので、是非ともがんばって欲しい。

廣瀬智紀蘭兵衛。月髑髏の蘭は夢見酒を飲まされる前から寝返っていて、イメージがとても変わった。蘭は無界屋を築きながらも、それこそ昔を捨てられずに蘭丸の、信長の記憶に苛まれていて。ちゃんともはとてもがんばってた。艶のある声と耽美な容姿という努力じゃ身につかない武器も立派に活きていたし。一幕最後、真っ白な彼岸花の中、髑髏城に向かうシーンは本当に美しかった。夢見酒飲んだ後、血を吐きながら信長に縋りつく様子がとても印象的で、目を奪われた。蘭も殺陣の進化には期待したい。舞うような殺陣は蘭っぽくて良いけど、ゆらゆらしがちなのが気になったので、体幹がぶれなくなると良いのかも。

木村了兵庫、荒武者隊とともにかっこ悪いけどかっこ良くて、ものすごく魅力的だった。羽野晶紀太夫と年齢差かなりあるから、関係性変えてくるのかと思ったけど、羽野さんが母性のあるとっても可愛い守ってあげたい極楽だったから良かった。天蘭に無界屋襲撃された後のシーン泣けた。渡京はザ・粟根まことな役どころだから、伊達さんどうするんだろうと思ってたけど、どうしようもないのに憎めず笑いもかっさらっててとっても愛すべき渡京だった。久しぶりに見たインディさんはインディさん。ずるい。七人がシルエットで並ぶシーンの演出は変わらず、やっぱり何だか泣ける。

に鎧を着せるシーンで、割れる仕様の仮面が捨に着ける時に割れるというハプニングや、一部映像トラブルもあって、若干の初日感もあったにせよ、本当に良い初日だったと思う。これから2月21日までの長丁場、怪我なく無事に終わりますように。